2013年3月13日星期三
にあってもひときわ思慮深かった
【世界史の遺風(45)】ハンニバル 古代最大の名将の教訓□東大名誉教授 本村凌二 世人はしばしば、ナポレオンが「わが辞書に不可能なる語はない」と言ったという。だが、正確には「不可能というのは愚か者の辞書にだけある言葉だ」と語ったのだ。 ところで、20世紀の2度にわたる大戦は大規模な殺戮(さつりく)をともなう悲惨な戦争であった。これ以前の戦争に目をやれば、1回の会戦で出た戦死者の数で前216年のカンナエ(カンネー)の戦いを上回るものはないと指摘する学者もいる。アルプスを越えてイタリア半島に侵入したカルタゴ軍がローマ軍を完膚なきまでにたたきのめした戦いであり、戦死者7万人といわれる。カルタゴ軍を率いたのは、かのハンニバルである。 カルタゴは現在のチュニス近郊を拠点とするセム語系の海洋国家であった。前3世紀後半、カルタゴはイベリア半島の征服にのりだす。その指導者ハミルカルは勇将としてその卓抜な軍才を畏敬されていた。その最期も、増水した川で部下を助けようとして溺死したから、まさしく英雄だった。このハミルカルの長子がハンニバルである。 彼が26歳で歴史の表舞台に登場したとき、古参兵たちは父ハミルカルが若返って帰ってきたかと思ったという。同じような生き生きとした顔つき、力強いまなざし、顔の輪郭と表情があるのを兵士たちは見逃さなかった。 「危険に立ち向かうとき、こよなく大胆であり、危険の只中(ただなか)にあってもひときわ思慮深かった。どんな艱難(かんなん)にも身体は疲れを知らず、精神はくじけることがなかった。暑さにも寒さにも同じように耐えることができた,フェンディ バック さが。<,983; 前のページ123次のページ >
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